ファッションやアパレル業界に関わる人が一度はぶつかる問題。それはマネキンやトルソーの呼び方が会社や人によって違うことだと思います。
この記事を書いている私も、新人時代にブランドの担当者様から「店頭で使うボディを提案してほしい」と依頼され、意気揚々と自社のトルソーを提案しました。すると実はマネキンの提案を求めていた…なんてことがありました。(今では笑い話ですが、当時はとても焦りました!!)
VMD担当者やショップスタッフにとっては日常的に使っている言葉だと思います。しかし実際に販売しているメーカー各社でも、呼び方や定義はとても曖昧。マネキンメーカーとして、この問題は絶対に避けては通れないので、今回はイチから説明していきたいと思います。
マネキンとトルソーの基本的な違い
そもそもマネキンやトルソーは店舗什器の一つとされ「全身(胴体)に服やアクセサリー、カバンなどを身につけさせ、店内やショーウィンドウにディスプレイとして飾るための道具」です。主にショップの店頭やディスプレイツールとして置かれることを目的としており、お客さんの興味を引き付け、購買意欲を高めるための広告や販促ツールとしての役割を担っています。
マネキン(仏:Mannequin)
マネキンは人間の形状に一番近く、顔や手足が付いており、ポージングを取っている種類があることも特徴です。トルソーやハンガーに比べ、商品を立体的にディスプレイすることができます。
トルソー(伊:Torso) / ボディ(英:Body)
トルソー・ボディ共に「胴体」という意味があり、日本では同じ呼称として使われています。腕や頭が付いていないトルソーが一般的で、マネキンに比べボディ自体の存在感を消してディスプレイすることができます。
マネキンとトルソー、どっちを使えばいいの?
店頭やショーウィンドウで使用する際、どっちを使えば良いの?と思われるかもしれません。マネキン・トルソー共にメリット/デメリットがありますので、用途や表現によって変えましょう。
マネキンのメリット
マネキンの特徴はなんといっても「等身大の身体」を持っていること。全身を使ってトータルコーディネートが出来るため、シーズン提案やブランドイメージを伝えることができます。またヒト型をしているため目を引き付ける効果が高く、マネキンを見る消費者も手持ちの洋服との組み合わせや着用イメージが想像しやすいため購買率アップが期待できます。
マネキンのデメリット
メリットの裏返しでもありますが、全身コーディネートできる反面、個別アイテムの訴求が弱いところがあります。例えばトップスを着用させずパンツだけ着用させると、ちぐはぐな印象を与えてしまいます。
トルソーのメリット
トルソーはジャケットやTシャツなどを単品で着せ付けしても様になるので、マネキンより使い勝手が良いとされています。最近はパンツ着用可能なトルソーもあるため、マネキンより簡易にコーディネートを作れます。場所を取らないため、ハンガーラックと組み合わせて使用すると効果的です。またヘッド部分やスタンド部分を取り換えることができ、ブランドイメージやお店の世界観によって、素材や色などのカスタマイズが可能です。
トルソーのデメリット
マネキンと違い、「帽子」「メガネ・サングラス」「ピアス」「シューズ」といった服飾雑貨を組み合わせられないため、コーディネートの幅を見せることはできません。またトルソー自体に動きがないため、スポーツやデートの待ち合わせなどのシーンを演出するには不向きです。
マネキンとトルソーの種類
「リアルマネキン」
カツラやメイクによってリアルな人間に寄せて作られたマネキンです。店頭やショーウィンドウで使用すると、見る人に強いインパクトを与え、メッセージ性のあるディスプレイに仕上げることが出来ます。メイクやカツラ制作など抽象マネキンにくらべコストはかかりますが、ブランドイメージやコンセプト表現に優れているため欧米を中心としたハイブランドでは未だに根強い人気があります。
「抽象マネキン」
顔を抽象化したマネキンです。アブストラクトマネキンと呼ばれることもあります。
日本では店舗でのコストカットの流れもあり2000年頃から徐々に増え、現在良く使用されるタイプとなっています。リアルマネキンにくらべ年齢層やイメージに左右されにくいため、様々なブランドやで利用されています。
「スカルプチャーマネキン」
リアルマネキンと抽象マネキンの間として、顔や頭部を半リアルにしたスカルプチャー(彫刻)マネキンという種類も出てきています。リアルメイクはもちろん単色塗装でも存在感を出すことができるため、欧米のブランドを中心に利用されています。
「ヘッドレスマネキン」
マネキンの頭部がついていないマネキンを指します。抽象マネキンよりも存在感が控えめなのが特徴です。着用イメージが想像つきやすいため、幅広い層がくるファストファッションやウェディングドレスなどの衣装をディスプレイするのに適しています。
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「ディスプレイトルソー」
一般的なディスプレイをするためのトルソーです。マネキンと比べると素材が多様で布貼りやFRP(強化プラスチック)が主流です。トルソー・ボディの中でも腕や頭が付いている物は「腕付きボディ」「ヘッド付トルソー」といった表現をします。また振袖や着物を綺麗に着せ付けるための和装用ボディもございます。
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「裁断用ボディ」
既製服用の工業用ボディなど「服作りで使われるボディ」を指します。立体裁断やフィッティング用としてアパレルメーカーやアトリエ、学校で使用されています。また日本では人台(じんだい)やForms(フォーム)と呼ばれることもあります。裁断用ボディには既成服の製作のためにゆるみ量を含めた「ドレスフォーム」とゆるみ量を含めないヌード寸法を用いた「ヌードボディ」の2種類あります。
【裁断用ボディの商品ページはこちら】
(番外編)ちょっと変わったマネキンやトルソー
「ぽちゃかわマネキン」
ぽちゃカワ、ポチャティブ等のトレンドなどファッションの世界でも、多様性への取り組みが進んでいます。ショップや百貨店での販促ツールの一つとしてぽっちゃかわマネキンを開発しました。Lサイズ向けのブランド様でのディスプレイ使用の他、浮腫治療向けのクリニックなどでもご使用いただいています。
【ぽちゃかわマネキンの商品ページはこちら】
本商品について繊研新聞社様・ORICON NEWS様・Yahoo!ニュース様に取り上げて頂きました!
繊研新聞社:『マネキンも“ぽちゃカワ”七彩新シリーズ』
ORICON NEWS:『マネキンにも“多様性”が必要なのか? 国産メーカーに聞く、体型変化の変遷』
Yahoo!ニュース:『マネキンに「よくわかってる」称賛の声 「ターゲット層に寄り添った」〝リアリティー〟どんなデザイン?』
「フレキシブルマネキン」
芯材にポリウレタンを使用した変形マネキン。好きな形に曲げることが出来るため、スポーツや運動会など躍動感ある演出をすることが出来ます。自由に曲げられるため様々な動きを作ることが出来ますが、「重厚感」や「高級感」といった演出をするには不向きとされています。
【フレシキブルマネキンの商品ページはこちら】
「インティメイト(下着)用マネキン / トルソー」
株式会社七彩は下着メーカーのワコールグループということもあり、ランジェリーの着用を想定したマネキンを数多く作っています。特に美・快適・健康を意識したポーズと自然なバストの形にこだわっているため、従来のマネキンよりフィッティング性も高く、商品を美しく際立たせる演出が可能です。
【インティメイト用マネキンの商品ページはこちら】
「マタニティーマネキン / トルソー」
妊娠中でもお洒落に過ごしたいママ達のライフスタイルに対応したマタニティー向けのマネキンとトルソーを取り扱っています。お腹のサイズは体型とシーンに合わせた5カ月と8カ月の2タイプをご用意しています。
【マタニティーマネキン / トルソーの商品ページはこちら】
「そっくりマネキン」
1971年、七彩は世界で初めて人間を頭からつま先まで生体のまま型取りできるFCR技法を確立しました。その技法を応用して1975年には岡本太郎のスーパーリアルマネキンを作り、再現性の高さは多くの話題となりました。最近ではこの技術と3Dスキャンを組み合わせ、プロ野球のイチロー選手のそっくりマネキンを製作しました。
本商品について日経クロストレンディ様に取り上げて頂きました!
日経クロストレンディ:『「不気味の谷」は越えるか? 怖いほどリアルなマネキン』
いかがでしたか?
「それぞれの使い分け方に迷っている。」「自社に適した商品が分からない!」と思いましたら、是非NANASAI ONLINE STOREまでご連絡ください。
空間演出のプロの目線で、マネキン・トルソーの選び方からオリジナルの特注対応まで幅広くご提案させていただきます!